『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』

世界屈指の食通たちに愛された伝説のレストラン「エル・ブリ」。

その厨房に君臨した料理界の革命児、フェラン・アドリア率いるシェフ達に

密着した貴重なドキュメンタリー。新メニュー完成からお披露目に至る、

その緻密なプロセスのすべてが見れる、TC読者にオススメの一作です。

『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』

12月10日(土)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

(C)2010 if…Productions / BR / WDR

(C)Francesc Guillamet

出演:フェラン・アドリア、オリオール・カストロ、エドゥアルド・チャトルック

監督:ゲレオン・ヴェツェル

公式サイト:www.elbulli-movie.jp

 

■Introduction                    

 「エル・ブリ」は、スペイン・バルセロナから高速で約2時間ほど離れたカタルーニャ地方にある三つ星レストラン。45席しかないシートに世界中から年間200万件もの予約希望が殺到する<世界一予約のとれないレストラン>である。

 カラ・モンジョイという美しく小さな入り江に面したこのレストランの厨房を仕切るのは、オーナーシェフのフェラン・アドリア。<世界でもっとも革新的なシェフ>と称され、食の世界に旋風を巻き起こし続けるカリスマだ。亜酸化窒素ガスを使いあらゆる食材を泡状にする調理法、エスプーマの開発や、ミキサーにかけた様々な食材をカラフルな球体にすることなど様々な調理法や器具も考案している。また日本の食材、ゆずの魅力を世界中に広めた功績は有名だ。

「常に客に驚きを提供する」という強いこだわりを持つ彼は、先進的な手法を模索しながらときに科学との融合も試み、斬新なアイディアを用いて食の固定観念を打ち破ってきた。

 しかし、‘11年1月、突然、同年7月30日をもってレストラン業務を終了することが発表された。このニュースは世界中を駆け巡り、食の世界ばかりか食に関係のない業界にも大きな衝撃を与えることに。とはいえ、食の研鑽に憑かれた彼の闘いに終止符が打たれたわけではない。今後はエル・ブリを“料理研究財団”に変え、コンテンポラリー料理のさらなる進展のために心血を注ぐという。ハリウッドでの映画制作も進行中だ。

 本作は伝説のレストラン、エル・ブリの裏側にカメラが密着した貴重なドキュメンタリー。通常は4月初めから秋までのオープン期間を変更し、初めて7月から冬まで営業をするという新しい試みの準備過程を記録したものである。

 冬に旬を迎える食材を意識し、アトリエでの新しい料理の開発と研究、レストランでのクリエイティブな作業、そして新メニュー完成からお披露目に至るまで。それらの緻密なプロセスには例年以上に神経が注がれ、ただならぬ意欲に燃えている。その姿には、食に興味のある人はもちろんまったく関係のない人も驚き、興味をかき立てられるのは必至だろう。

 映画は、スタッフによって荷造りされた様々な調理器具がバルセロナにある料理研究用のアトリエに運ばれるところから始まる。ドイツ生まれのゲレオン・ヴェツェル監督は余計な演出を削ぎ落とし、フェランとそのスタッフの動きと会話、多彩な食材とその調理の姿を追いながら、彼らの苦悩と焦燥、新しい物を生み出すことの喜びと達成感をフィルムに焼き付け、「エル・ブリ」の神髄を伝えている。美食家が垂涎の映画であることは間違いない。

 

■Story                  

 レストラン「エル・ブリ」では壁の絵画が外され、使い込まれた様々な調理器具が丁寧に包まれ、トラックの荷台に収められていく。車が目指すのはバルセロナにある研究用アトリエ。冬の間、半年間の休業中に、シェフチームはスタジオにこもり、来シーズン用の新メニュー開発と研究に没頭することになる。

 荷ほどきの完了したアトリエには様々な素材が持ち込まれ、新しい手法によった調理が試されていく。生、焼く、煮る、蒸す、揚げる、つぶす……。さらには真空化、球体化、フリーズドライなど、思いつく限りの手法を用いて新しい料理を模索し、試食していく。実験結果は、その良し悪しに関わらず厨房におかれたパソコンに記録されていく。

 夏がやってくるとすべてが一変する。眠っていたレストランを、一瞬にしてフル回転させなければならない。世界中、5,000人もの応募者から選ばれた35人の新米シェフたちは、それぞれ担当が決められていく。しかし、未知なる料理の領域へと足を踏み入れた彼らは、最初からそのスピードについていけるわけはない。時には厳しい階級組織を自覚させるために、いつもは冷静なオリオールも声を荒げる。

 そんなレストランの慌ただしい雰囲気のなかで、どっかりとテーブルに座っているフェランは仕上げに入る。彼の舌と目によって、最終的な決断が下されるのだ。

 いよいよオープニングの夜。客ひとりにつき30皿以上を提供するエル・ブリの厨房はまさしく戦闘状態。「今年のエル・ブリが打ち出すのは水だ!」とフェランは誇らしげに言う。素晴らしいアイディアはたいていシンプルでありながらそれまでの常識を超えるものだと気づかされる。

 

■エル・ブリ の秘密

「エル・ブリ」とは?

フェラン・アドリアとジュリ・ソレールが経営するレストラン。フェラン・アドリアは現代の最も独創的なシェフと評された。レストラン「エル・ブリ」は、その革新的な料理によって世界的に有名になり、予約希望者が殺到している。これまでに世界のベストレストランを選ぶサンペグリノ後援の「世界のベスト・レストラン50」で過去5回、世界第一位に選ばれている。

名前の由来

初代オーナー、ハンス・シリングとマルケッタ・シリング夫妻が名付けたもので、彼らの愛犬のフレンチ・ブルドッグを「ブリ」と呼ぶことから名付けられた。彫像、イラストなどお店の至るところに「ブリ」モチーフのものが飾られている。

どこにあるの?

スペイン北東部カタルーニャ地方にあるジローナ県ロサスにあるコスタ・ブラバのモンジョイ湾の入り江にあり、バルセロナから高速で1時間半の距離。

なぜエル・ブリは6カ月のみ営業しているの?

独創的な料理を提供し続けるため、半年のみ(4〜10月まで)営業して、残りの半年間は新しいメニューの開発に勤しんでいる。ただ、この映画が扱っている2009年は、エル・ブリが初めて7月から12月まで営業した年。キノコなど秋冬の食材を扱うため、フェランたちもいつにない緊張があった年である。

ミシュランの星の数は?

三ツ星★★★

年間何人の客がエル・ブリで食事をする?

約8000人。(約50人/日 x 160日/シーズン)

予約希望の年間件数は?

約200万件

何人のスタッフが働いている?

時期にもよるが、約60~70人。つまり、客の数を上回っている。そして、デンマークのレストラン「ノーマ」のレネ・レゼピ、スペインのジローナにある「エル・セジェール・デ・カンロカ」のジョアン・ロカをはじめとした、現在世界トップ20の料理人のうち、半数がエル・ブリで働いていた経験がある。その誰もが「エル・ブリで開かれた勉強会が、自分の目を開かせてくれた瞬間だ」と語るほど、多くのものを得て巣立っていく。

コースの内容は?

料理はアラカルトではなく、全てコース料理として決まっている。その品数はとても多く、40皿以上に及ぶこともある。毎シーズン、メニューを一新するので同じ料理は二度と提供されない。またお客は最初に厨房に案内され、見学してから食事を愉しみ、食後に厨房で別れの挨拶をするのが、エル・ブリ流のおもてなし。

エル・ブリの格言

「クリエイティブとは、真似をしないこと」。フェランと彼のチームは、フランスの天才シェフ、ジャック・マキシマンのこの格言を日々の研究におけるモットーにしている。

エル・ブリがめざすサービス

本作の中でも、フェランがスタッフに対して、いかに迅速にサーブするかが大事であることを説いている。日本人にとっては当たり前のように感じられるが、もともとおおらかでのんびりとした土地柄のスペインにおいて、こうした迅速さを求めるのはあり得ないと言っても良いほど。

エル・ブリの食器

料理にあうベストな食器で提供するため、様々な形や色、質感のお皿がある。これらは、アトリエそばにある工房兼事務所で試作されている。

エル・ブリのまな板

映画の中でも登場して驚くのは、まな板が真っ赤な色をしていること。日本では見慣れない色だが、スペインではこの赤いまな板が一般的なのだ。

フェラン伝説①:スパイスの棚

エル・ブリの研究用アトリエといえば、スパイスが整然と並べられた棚が有名。これはフェランが料理のアイディアを湧かせるために陳列したもの。今や、世界各国のシェフズ・テーブルにはスパイスの棚が置かれている。

フェラン伝説②:エスプーマ

どんな食材も簡単に“泡”に変身させる調理法、エスプーマ。フェランが開発したことで一躍有名になった。今では西洋料理のみならず、日本料理など様々な場所で応用されている。

進化しつづけるレストラン、エル・ブリ

2011年7月、惜しまれつつレストランとして閉店したエル・ブリだが、2年後に料理研究財団として新たに生まれ変わる。これまでの料理のアーカイブや、新作料理や新食材の開発を行うことが発表されており、エル・ブリの進化はとどまるところを知らない。

 

  ■Cast&Staff Profile

フェラン・アドリア(オーナーシェフ、共同経営者) 

1962年生まれ。ロスピタレート・デ・リョブレガート出身。80年イビサ島にあるホテルで食器洗いから始め、スペインの伝統料理を学ぶ。その後レストランやバールを転々とし、バルセロナで1、2を争う高級レストラン、フィニステレに入店。83年エル・ブリのインターンシップ「ステージ」を受け、オーナーのジュリ・ソレールと出会い、部門シェフになり、その後クリスチャン・ルトーとともに料理長を務める。フランス各地の最高級レストランを訪問し研究を重ね、87年遂に単独で料理長を任される。独自のスタイルはこの頃からはじまり、エル・ブリは世界で最も影響力のあるレストランになる。

 1997年 エル・ブリ、ミシュランの3 つ星を獲得。

 2004年 『タイム』誌の表紙を飾り、世界の有名人100 人のひとりに選ばれる。

 2002、2006、2007、2008、2009年 イタリアのミネラルウォーターメーカー、サン

  ペグリノが後援する「世界のベスト・レストラン50」で5度、世界一の栄誉を獲得。

 2007年 ドイツのカッセルで開催された現代美術展ドクメンタ12に参加。料理人が参加

  するのは初めてで、芸術家として認められた証と言える。

 

オリオール・カストロ(料理研究家、試作担当) 

1974年生まれ、バルセロナ出身。スペイン・マンレサの料理学校とバルセロナ・パティスリー組合の専門学校で学ぶ。エル・ブリには、95年に初めてパティシエの見習いインターンとして参加。97年に温かいオードブルの部門シェフを任され、その冬には新メニュー開発の担当に。98年以降はクリエイティブ・チームの主要メンバーである。現在はエドゥアルド・チャトルックとマテウ・カサナスと共に料理長を務める。

 

エドゥアルド・チャトルック(主任シェフ) 

1981年生まれ。スペイン、タラゴーナのビラ・セカ出身。カンブリルスにある料理学校で学ぶ。数々のインターンを経験し、エル・ブリには98年に初めて足を踏み入れる。00年3月にライン・シェフに昇格したのと同時に正式スタッフに加わり、現在はオリオール・カストロとマテウ・カサナスと共に料理長の役割を任されている。フェラン・アドリアや仲間と、オフシーズンは次シーズン用のアイディアを練る。購買の責任者であり、新商品を探す責任者でもある。

 

ジュリ・ソレール(共同経営者) 

元々音楽プロデューサーとして活動しており何年もレコード店を経営していた。エル・ブリの前オーナーのハンス・シリングとマルケッタ・シリング夫妻から総支配人にならないかと誘われ、エル・ブリを買い取り、自分の夢を料理に託すことになる。フェランの才能をいち早く見抜き、見習いからシェフへ抜擢し、エル・ブリを成功へと導いていった。現在は、ジュリとフェランは共同オーナーとなっている。

 

ゲレオン・ウェッツェル(監督) 

1972年、ドイツのボン生まれ。ハイデルベルグ大学で考古学の修士号を取得後、スペイン、バルセロナにて語学教師として1年間働く。その後スペインにある海洋考古学の研究所で考古学者として働く。2000年~2006年にかけて、ミュンヘンのUniversity of Film and Television (HFF Munchen) にてドキュメンタリー映画制作課程を修了する。現在もミュンヘンに住み、フリーランスの作家と映画制作者として働く。